紹介
不安があってもだいじょうぶ。
不安があるからだいじょうぶ。
哲学者と禅僧による、不安の正体を知り、不安と上手につきあうための17項目。
本書を読む中で、穏やかで、程よく幸せな自分と出会えます。
現代は「不安の時代」などと言われます。先行きが見えない、何が起こるかわからない、VUCAの時代とも言われます。あらゆる環境がめまぐるしく変化し、将来の予測が困難なことを指します。
そこで生じる不安に対し、あるいは、そこで望まれる「不安をなくしたい」という気持ちに対し、多くの専門家たちが誠実に答えているのを散見します。
しかし、禅と哲学からすると、絡め取られた状態を解きほぐすことはできても、「不安をなくす」ことはできないのです。ですから本書も「一瞬で不安がなくなる」本ではありません。むしろ、「不安がなくなる」ことは、決して「よく生きる」ことにはならない、不安こそ人間の根本の一つだと説きます。
哲学者と禅僧、彼らに共通するのは、生きることに決して器用ではないということ。ずんずん先には進めない人たちであるということです。その分、世を見つめ、自己を見つめ、不安ともきちんと向き合い、つきあってきています。その二人が、それぞれの「不安」を吐露し、向き合いながらも、サルトル、アランなどの哲学者からの智慧、中国唐代、日本江戸時代の禅僧たちからの智慧をひきつつ、現代に生きる私たちの「不安」を紐解き、それとのつきあい方を提案します。
見かけの不安をなくす(隠す.目を背ける)のではなく、その本質を見極め、「不安とともに安心して」一生を生きるための本です。
目次
はじめに
序 章
予想外の事態
大竹稽のエピソード
松原信樹のエピソード
わからなくてもだいじょうぶ
第1章 不安がもたらす五つの「虚無」
無関心
他人の目
無関心への哲学からの警告
無関心への禅からの警告
無関心とのつき合い方
不満足
備えがあっても不安は残る
不満足と不満と不足
「不足」は「自己」を知るきっかけ
「足りない」に囚われなければ、「不満」にはならない
自分の内の宝珠に気づく
「足りない」は事実ではなく幻想
無批判
批判的思考の禁止という恐怖
信疑の両輪
正しい意見に敢えて抗う
無難・無事
安定志向の罠
転んでもだいじょうぶ
禅の「無事」
不安があるから踏み出せる
無感動
世界はワンダーに満ちている
小石でもただの小石ではない
感動は足下にある
ヘレン・ケラーの奇跡を生んだもの
センス・オブ・ワンダー
第2章 不安をもたらす六つの「悪癖」
大衆化
居場所の喪失
正しさの絶対化
「大衆」はパンを求めてパン屋を壊してしまう
満足しきったお坊ちゃん
「わからない」を大切にする
正しい答え
正しい答えへのプレッシャー
自灯明と法灯明
自覚すればこそ
権威から離れてみる
承認欲求
ピラミッド型五段階欲求の問題
SNSと不安
身の程がいいね
理想の自分とありのままの自分
いじめ
いじめ防止対策推進法
行為から心へ視点を変える
誰もがいじめてしまうかもしれない
寛容であれ
先入観
先入観? 潜入観?
アイデンティティが生む不安
変でいい
コストパフォーマンス
最短最速最大
自分がモノになってしまうのではないか?
無用が大事
道草のすすめ
第3章 不安と上手につき合う六つの「習慣」
立ち止まろう
列車を押さない
悲しみの中にパンを食べる
脚下照顧
慎もう
楠の木のように
諸行無常
縁に生きる
上手に楽しむ
遊ぼう
遊べない大人
嘆きも羨みも呪いもしない
子どもたちといっしょに
調えよう
整える
調える
身体がバランスを教えてくれる
慈しもう
子育て幽霊
貧者か富者か
「慈しむ」か「可愛がる」か
自慈心と自尊心
巡らそう
恩返しの作法
本来の豊かさ
しあわせは巡る
あとがき
著者
BOW'S EYE
通常のこういう本ですと、1分で不安がなくなる的な癒し系、あるいは、こうして不安と戦おう的自己啓発が多いのですが、そんなウソは本書にはないです。だって、人間が、先のことを考えることのできる動物である限り、不安はなくならないのですから。 むしろ不安こそが人間を人間たらしめている。必要なのはそれとの上手な付き合い方である、このことを前提に、無関心、無感動から、いじめ、承認依存などまで、私たちの抱える多くの課題の根底に、「不安」があり、いずれも己の「不安」とうまく付き合えないことからくるものであることを紐解きます。 その上で、不安と上手につきあう、心のあり方、日々の行為を示します。 著者の大竹稽さんは、哲学寺子屋を主宰する市井の哲学者、ディスカヴァー時代もいくつか本を書いていただきました。 今回は、あのベストセラー「般若心経入門」の松原泰道師のお孫さんで臨済宗龍源寺住職、つまり禅僧の松原信樹さんとともに、それぞれ、西洋哲学者、臨済宗名槍やお経を引用しつつ、私たちの、そして著者たち自身の抱える不安と向き合います。 最初、「不安で眠れない夜に」というタイトルにしましたが、余計眠れなくなるかも、ということで、営業部ともめにもめ、ちょっと知的すぎるかな、系のタイトルになってしまいましたが、実際眠れなくなるのは不安が高まるからではなくて、思考を刺激されるからです。 そして、何日かかけていつのまにか、不安を抱えている自分や、自分に不安を与えている他者を許している自分に気づくのです。不思議な本です。関連書籍
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BOW BOOKS 004
哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ
著者 大竹 稽/スティーブ・コルベイユジャンル リベラルアーツ 発売日 2021.11.25